装丁画

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母の風景は夢みたいにふわふわした彩りの遊園地。

大きな観覧車、そこへ走ってゆきたい衝動。

ああ、こんな処でずっと遊んでいたいねって、
わたしは小さな子どもの背中を見送る。

自分だけの遊技場、終わりのない閉園時間。
夢の世界で日常の、大きい身体の、
生きてゆくために必要なことらは
きっと辛いことばかり。

他の子どもが遊具を独占しようとすれば怒るし
他の子どもがそこで楽しもうとすれば嫉妬して阻止する。
子どもはそんな我が侭に満ちた世界の中で
見守られながらいつまでも回転していたいだろう。
帰りたくないっていつまでもいつまでも。

わたしはその描かれたものを見てずいぶんと楽になった。


父の風景は静かな故郷の田園。
秋のすこし冷たい風に、たなびく稲穂の波。
しんとした安心の森に囲まれた完璧な世界。
誰も入る隙のない
彼らだけのパーフェクトワールド。

あんなすごい場所を知っていたら
もうそれ以上は望まないだろう。
あんなに安心を知っていたら
もうそれ以上を手に入れるのは難しいかもしれない。

だから帰りたい帰りたい。
あの場所で
ずっと優しさに包まれながら安心して眠ってたい。

わたしはその場所を見てすこしさみしくなる。


子のわたしたちは乗り物に乗って
どこかへ行こうとしてる。
光を探して
知らない世界を探して。

電車とバス、
レールと自由な道という違いがあるけど
全く違う場所、未知の世界へ
わたしたちは向かってる。

案内してくれる道筋と
見守ってくれる知らないひとが
そっとすこし離れてついてきてる。

わたしはその見えない気配に、安心する。


誰もが誰かに守られていて
それは大きい人が小さい人からのときも
小さい人がもっと小さな気配からのときも
大きい人がもっと大きな気配からのときもある。


絵が物語をひらいて膨大な量のイメージを語ってくれる、それはまるで
ブックカバーのよう。
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by nemo_yuka | 2013-11-05 09:12